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JESAコラム 第89回


キャッシュレス決済の動向その2
電子マネーの現状

元東海大教授 片岡信弘

キャッシュレス決済の動向その1では、政府のキャッシュレス・ビジョンや世界の各国のキャッシュレス決済の状況について説明しました。 今回のその2では、日々のキャッシュレス決済に利用される電子マネー(ICカード型、QRコード型)の現状について説明します。

1.電子マネーの分類
それぞれの形態や決済時期で分類すると下記となります。

 (1)形態での分類
 これは下記の二つが存在します。
・ICカード型(含モーバイル型)
・QRコード型
 ICカード型は、従来から広く利用されているICカード型電子マネーですが、 カード情報をスマホに登録するモーバイル型も若い世代を中心に広く利用されています。 一方のQRコード型は、店舗側が提示する、QRコードを読み込むタイプと、 客が提示するQRコードを店舗の端末で読み取るタイプの二つの方式があります。

 (2)決済時期での分類
 これは下記の3つに分類することができます。
・プリペイド型
・デビット型
・ホストペイ型
 プリペイド型は、事前に現金やクレジットカード等から金額をチャージしておくものです。 デビット型は、支払金額が銀行口座から即時に引き落しされるものです。 ホストペイ型は、事前に登録としてしておいた、クレジットカードから引き落とすものです。

 (3)代表的なもの表示
 上記の(1)の形態での分類を縦軸として(2)の決済時期での分類を横軸にして その中に代表的な電子マネーを配置したものを図1に示します。

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図1. 電子マネーの分類と代表的電子マネー

上半分には、QRコード決済のものがならんでいます。この中で、Alipay、WeChatPayは、中国で広く利用されているものですが、 中国からの観光客の利便性のため日本でも多くの店舗がこれに対応しています。
 下半分には、ICカード型のものを並べています。iDのみは、プリペイド型、デビット型、ホストペイ型の3種類を提供しています。 また、一部は、交通系に分類されます。これは、SuicaやPASMOなど交通機関の自動改札用のものに電子マネーの機能が追加されたものです。 図には記載していませんが、JR各社で発行している電子マネーも存在します。PiTakaは、関西の私鉄協議会の発行した電子マネーで、 言わばPASMOの関西版ですが、交通系のなかでは唯一ホストペイ型となっています。

2.決済の仕組
 電子マネーで買い物をした時、支払金額は、電子マネーの運営会社経由で各店舗に支払われますが、 このプロセスについて説明します。この事例では、ICカード型の事例ですが、QRコード型の場合も基本的に同じです。
 (1)プリペイド型の決済
 決済のプロセスを図2に示します。

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図2. プリペイド型の決済

①客は、チャージ用端末等から金額を払い込むと運営会社のサーバの残高が更新される。
 ②運営会社は、カード上のICチップに記載されている残高を更新する。
 ③客が電子マネーで買い物をする。
 ④店舗の端末は、使用記録を運営会社に送付する。運営会社は、サーバ上の残高を更新すると共に
 カードのICチップ上の残高も更新する。
 ⑤後日の決済処理時点で、店舗に支払金額が支払われる。
 運営会社のサーバで金額残高が管理されているため、ICカードを紛失してもICカード再発行により 残高を回復することが可能です。ただし、記名式のカードに限られます。 また、運営会社によりこれを認めていない会社もあります。

 (2)ホストペイ型の決済
 決済のプロセスを図3に示します。

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図3. ホストペイ型の決済

①客は、クレジットカード情報を運営会社に登録する。
 ②客が電子マネーで買い物をする。
 ③電子マネーIDと利用金額が運営会社に送信される。
 ④運営会社は、クレジットカード会社に購入店舗への支払を依頼する。
 ⑤クレジットカード会社は決済処理として後日店舗へ支払を行なう。
 ⑥クレジットカード会社は毎月の決められた日に客の預金口座より支払金額を引き落とす。
 ホストペイ型では、チャージされた金額を管理するという手間が必要ない点がメリットです。 ただし、クレジットカード会社に対する手数料が必要な点がデメリットです。 また、客は、クレジットカードを持っていることが条件となります。


以上


2019/06/17