JESAコラム 第88回
北海道電力管内で我が国初めてのブラックアウトが発生
元東京電機大学 西川尚男
H30年9月6日午前3時7分頃、北海道胆振地方で震度7の地震が発生し、その地区に設置された北海道電力管内の約半分の発電能力を有する図1に示す 「苫東厚真火力発電所」の2,4号機タービンの配管の破損と1号機タービン付近の火災により、緊急停止が発生し、北海道電力管内で3回の強制停電を実施したにもかかわらず、 電力需給のバランスが回復せず、同日午前3時25分北海道電力管内で全国で初めての全停電(ブラックアウト)が発生した。
図1 地震の影響で停止した苫東厚真火力発電所
以下にブラックアウト発生までの経緯につき図2をもとに説明する。9月6日午前3時7分に地震が発生し、その直後に苫東厚真火力発電所のタービンの故障により2,4号機が緊急停止し、 電力の供給量が急激に減少したことにより、50Hzの電源周波数が1分足らずで46.13Hzまで低下し、その後直ちに一般地区への電力供給を強制的に止めて需要を抑える負荷遮断を実施したことにより 周波数は一時50HZまで回復した。しかし一般家庭では照明・テレビをつけ始めることにより、即ち負荷の増大により、周波数は一時49.5HZまで低下したが、近くにある伊達火力発電所などの出力増大により、 1時的に50HZまで回復した。しかし苫東厚真火力発電所の2,4号機停止から約12分経過後、苫東厚真火力発電所の1号機の出力が低下し、需要の低減で1時的に周波数は回復したものの、 3分後には苫東厚真火力の1号機が緊急停止に至り、その後ブラックアウトにいたった。
図2 北海道電力管内に於けるブラックアウト発生の経緯
電力需要の大きい昼間であれば他の発電所からの電力供給も多かったと思われるが、地震発生は深夜であり、更に電力供給が図3に示すように北海道電力管内の約半分の電力を苫東厚真火力発電所が供給し、 不幸にも全タービン(1,2,4号機)が緊急停止に至ったことがブラックアウト発生の大きな要因になったと推定される。
図3 地震発生時の道内の電力需要に占める電源の割合
真夜中の停電は、例えば病院などでは、医療機器に頼って入院されている方が大勢おられたであろう。命に係わる問題である。 今後は北海道電力管内でなぜブラックアウトが発生したのかの原因を幅広く調査し、万全な対策を立てるよう願っている。
参考文献
1.日本経済新聞(2018年9月7日、8日)
2.産経新聞(2018年9月22日)
3.毎日新聞(2018年9月20日)
4.太陽光発電の運用状態を診断(パソコンより)(2018年9月19日)
2019/04/10