JESAコラム 第85回
九州電力が太陽光発電電力の出力制御を実施した
元東京電機大学 西川尚男
再生可能エネルギーの一つである我が国の太陽光発電容量は現在約4500万kWに達し、 2020年の我が国の目標値である2800万kWを大きくうわまわっている。 その中でも九州電力管内は日照条件が良いため、図1に示すように以前畑であったと思われる場所に太陽光パネルが一面に設置され、 また図2に示すように太陽光発電容量が807万kWと他の電力会社と比べて極めて大きい。
図1 太陽光パネル
図2 各電力管内の太陽光発電接続量
このため春及び秋の土及び日曜日には、九州電力管内の昼間の電力需要が低下するのに対し、過剰と思われる太陽光発電電力が系統に導入されるため、 れまで夜間電力の活用に利用していた揚水発電装置を昼間の電力貯蔵用にフル活用することにより 電力の需要と供給をバランスさせながら電力運用を行っている。この状況についてはJESAコラム第68回で紹介した。
電力会社は、過去のデータをもとに、あらかじめ翌日の時間的に変化する電力供給量と需要量を求め、当日はその基本計画をもとに、 微調整を行いながら、電力運用を行っている。今回の報告はH30年10月13日の電力運用について、 天気予想状況をもとに、九州電力が13日の発電計画を立案した時、太陽光発電事業者から供給される電力が増大し、 一方季節的には秋であるため真夏より電力需要が低下するため、結果として電力需要量と供給量にアンバランスが生じ 大停電に至る可能性があるとの結果が得られたため、太陽光発電事業者から九州電力管内に供給される電力の一部を停止する要請を 太陽光発電事業者へ行なわざるを得なかったという内容である。尚このような一部の太陽光発電業者に電力供給を停止させる行為を 「出力制御」といい、今回の「出力制御」は国内で初めてのことであった。
図3 電力供給量と需要量
以下13日に実際に計画された状況を図3をもとに説明する。2018年10月13日の太陽光発電装置が最も多く発電する時間帯の 九州電力管内の電力供給量は1293万kW(太陽光:45.9%、原子力他:38.1%,火力:15.9%)で、 この時間帯の電力需要は828万kWで、ベースロードとしての原子力・地熱などから一定電力が、 火力発電では需要と供給のバランスを考量しながら電力量を最大限調整し、残り196万kWを域外に送電し、 226万kWを揚水発電と蓄電池に回したが、どうしても43万kWが過剰分になるという結果であった。 この解析結果をもとに13日は午前9時から午後4時まで、一部の太陽光発電業者から供給される電力を止めて対処するとした。 以上が10月12日に立案した電力需要と供給量の計画案であるが、当日の状態は太陽光発電事業者からくる電力の一部停止を11時に開始した程度で、他はほぼ予想通りに実施された。
このような対応に対し太陽光発電業者からは原子力を止めて対応できないのか、このようなことが今後とも繰り返されると事業計画が立てられない等の苦情が寄せられている。
太陽光発電電力をすべて使いきることが基本であることから、そのために①余剰電力を他の地域に送電する体制を強化し、そのため最終的には電力の連系を全国レベルで実施できるようにすること ②電力を貯蔵する蓄電池容量の向上、揚水発電設備の強化をはかること等が望まれる。
再生可能ネルギーの導入が進んでいる欧州でも「出力制御」は実施されているとのことである。従って先ずは「出力制御」の最小化を目指して、 着実に域外への送電の拡大、蓄電池等による電力貯蔵の拡大などを進め、再生可能エネルギーの拡大を図っていくことが重要である。
引用文献:朝日新聞(2018.10.13)、日経新聞(2018.10.14)
2019/02/04