JESAコラム 第66回
API経済圏その2
元東海大学 片岡信弘
API経済圏その1では，企業が提供するデータを利用して、斬新な機能を持ったアプリをパソコンやスマホで提供するものがAPIであることを説明しました。今回は、API利用事例を2つ紹介します。1つは、銀行やカード会社等が提供しているAPIを利用したマネーフォワードのサービス、2つ目は、倉庫会社が提供しているAPIを利用したサービスです。
- マネーフォワード
家計簿を作成してくれるサービスであり、クラウド上やスマホのアプリとして動作します。入金や支出を予め設定した項目別に集計し家計簿を作成します。現金での支払いは、レシートを撮影することにより家計簿に反映します。銀行、カード会社、電子マネー会社、電子マネーの入出金に対しても反映しないと家計簿として成り立ちません。そこでこれらが提供しているAPIが利用されます。
マネーフォワードでは、2600以上の銀行、カード会社、証券会社、電子マネー会社、ネット通販会社とAPIで連携しています。したがってこれらの入出金も全て家計簿に反映されます。具体的にAPIでどのように連携するのかを図1の某銀行の例で説明します。
図1の①により利用者は、マネーフォワードアプリで連携する銀行を指定します。②でマネーフォワードアプリは三井住友銀行のAPIを利用してネットバンキングのログイン画面を表示します。ここで利用者は、三井住友銀行にログインすることにより連係が成立します。③で口座の残高や入出金に関するデータを取得することが可能となります。この時、ネーフォワードアプリには、勘定系システムをアクセスする内部サービスをAPIで利用します。
ネットバンキングに対する、ログインは、利用者が直接行うためマネーフォワードアプリにIDやパスワードが保持されるのではないので安心です。
図1 マネーフォワードの銀行口座連携以上で、マネーフォワードアプリでの動きを説明しましたが、クラウド上のアプリでマネーフォワードを利用する時もこれと同じです。
現在、約500万人がネーフォワードを利用しているといわれています。
- 寺田倉庫
寺田倉庫が提供しているminikura APIは、「モノを管理する」倉庫システムと「モノを動かす」物流システムをITで統合することを狙ったものです。具体的には、配送、集荷、入出庫、商品撮影など約200のAPIを提供しています。このAPIを利用したサービスとして下記のものがあります。これらを図2に示します。
- AirClosetファッションレンタルサービス https://www.air-closet.com/
スタイリストが会員に合った洋服を送付するサービスを提供しています。洋服は、1回に3着を送付してきますが、返却すると次ぎにまた、洋服を送付してきます。これは、月に何度でも可能なため、利用者は常に新しい洋服の利用ができることになります。
このサービスを提供している株式会社エアークローゼットは、倉庫システムや物流システムの機能は全て寺田倉庫のシステムをAPIで連係することで行っています。すなわちこれらの機能を一切自社で用意することなく、速やかにビジネスを立ち上げることができます。返却されたものは、クリーニングして倉庫に保管しますが、これも寺田倉庫で行っており、AirClosetのシステムは、クリーニングを行うことをAPIで指示するのみです｡
- 魂ガレージ フィギュア専用倉庫 https://tamashiigarage.com/
フィギュアなどのコレクションを保管してくれるサービスです。預けたものは、1点1点撮影してくれますから、預けたコレクションをマイページで確認できます。倉庫への保管や取り出しや撮影は全て寺田倉庫で行います。サービスを提供する側のシステムは、これらの処理をAPIで指示するのみとなります。
- BUYMA ファッション通販サイト http://www.buyma.com/
株式会社カスカを行っている通販サイトですが、この企業も倉庫や物流機能は、全てAPI経由で寺田倉庫の機能を利用しています。
- Sumally Pocket トランクルーム https://pocket.sumally.com/
ダンボール1箱単位で低価格で倉庫に預けられるサービスです。必要に応じて箱単位で取り出しが可能です。このシステムもAPI経由で寺田倉庫の機能を利用しています。
図2 minikura APIの利用方式 - AirClosetファッションレンタルサービス https://www.air-closet.com/
参考文献
- マネーフォワード https://moneyforward.com/
- minikura API https://minikura.com/contents/api_service/