JESAコラム 第65回
発電部門のCO2発生抑制について
元東京電機大学教授 西川尚男
近年暑い日、大雨の日が多く、地球温暖化(結果として異常気象の発生)が、我々の生活環境に徐々に近づいているように感じられる。
この温暖化発生の要因の一つは多量の化石燃料を使用しているためであり、少しでもCO2の発生を抑制するため、例えば自動車分野では、 従来のガソリン車から走行距離当たりのガソリン量を減らしたハイブリッド車(HV)、ハイブリッド車の電気で走る距離を長くし、 電気自動車に近づけたプラグインハイブリッド車(PHV)、ガソリン部分がなく蓄電池のみを搭載し充電した電気で走る電気自動車(EV)、 水素により電気を発生させて電気の力で走る燃料電池車(FCV)というように着実に技術革新が行われ、商品化が進められている。 一方これらの機種の普及状況を紹介する。ハイブリッド車は日本が先行している機種で、2014年時の日本の乗用車保有台数6052万台に対し、 ハイブリッド車保有台数は470万台で普及率が7.76%となる。 また電気自動車関連では世界の乗用車総販売台数と電気自動車及びプラグインハイブリッド車の販売台数との関係を図1に示すように、 2015年度ベースで世界の総保有台数9.2億台に対し、保有台数が約120万台であるため、普及率が0.13%以下と極めて少ない。 いずれにしても自動車部門のCO2削減を進めるためには、一層の環境車の普及促進が重要である。
図1 世界の自動車総販売台数と電気自動車(PHV含む)の販売台数
一方電力業界の発電にかかわる分野について紹介する。電力部門の発電方法は大きくは①化石燃料を燃焼させて熱を利用し発電する火力発電、 ②水の落差、水量を利用した水力発電、③ウランを核分裂させて発生するエネルギーを利用した原子力発電、 ④太陽光、風力などの自然エネルギーを利用した再生可能エネルギー発電である。
現在の世界の発電設備容量および発生電力量を図2に示す。設備容量とは最大幾らの電力を発生できるかを示す指標で、 2011年時点で54.6億kW、その内訳は火力発電が65.8%(石炭:31.9、ガス:25.9、石油:8.0)、水力発電が19.4%、原子力発電が7.2%、 再生可能エネルギーが7.6%である。一方発電電力量は1年間にどれだけの電力を発生させたかを示す指標で、2011年時点で22.1兆kWh、 その内訳は火力発電が68%(石炭:41.3、ガス:21.9、石油:4.8)、水力発電が15.8%、原子力発電が11.7%、再生可能エネルギーが4.5%である。
図2 世界の発電設備容量と発電電力量(2011年)
代表的な国の電力構成を図3に示す(2014年)。石炭火力の大きい国はインド:75.1%、中国72.6%、 ドイツ:45.8%、アメリカ39.7%で、因みに日本は33.7%である。また2014年の世界のCO2発生量を図4に示す。 発生量の合計は約330億トンで、中国、アメリカ、インドの合計が世界の半分を占めている。
図3 主要国の電源別発電量の構成比(2014年)
図4 世界の二酸化炭素(CO2)排出量
以上から電力部門では石炭火力がCO2発生の主因となっているため、JESA第57回コラムに記述したように今後は火力部門の石炭からガスへの燃料切り替え、 石炭火力では発生蒸気の高圧・高温化による高校効率化、蒸気タービンとガスタービンとを組み合わせたコンバインドサイクル化の拡大等の実施を進め、 本命である再生可能エネルギーを積極的に増大させることが温暖化抑制に欠かせない。また日本は優れた火力発電技術を有していることから、 海外支援活動を積極的に推進していくことが重要である。