JESAコラム 第60回
ソーラーシェアリングの可能性
農業と太陽光発電を両立させる新たな視点に立つ取り組みとしてソーラーシェアリングの注目度が高まっている。
農地に太陽光パネルを設置するのだが、地面に敷き詰めるのではなく、支柱を立て地面から数mの中空に間隔を開け、
簾状に太陽光パネルを並べて、農作物の生産と太陽光発電を同時に行うというものである。
もちろん、太陽光パネルを隙間無く並べるのに比べ、発電規模は少なくなるが、作物の生産を行いながら発電もできるという点が画期的なのである。
通常の太陽光発電に比べて出力規模は半分以下になるのが通例だが、作物の成長に必要な日照は確保しながら、
「余剰日照量」を電力として活用しようという取り組みなのだ。
まだ試みは始まったばかりの段階で、大きな広がりは見られてはないが、農業関係者の理解が進めば、飛躍的に広がる可能性があるとして注目されている。
収入(売り上げ)面では、農業収入に加えて発電収入も期待できるわけで、農家の収入倍増計画といっても言い過ぎではない。買い取り価格にもよるが、売電収入が農業収入を上回ることも期待できるともいう。FITによる太陽光発電の買い取りは、現在では抑制的になってはいるが、この主な要因は系統連携制約によるものであることから、発電した電力を地域で融通し合う小規模の地域分散型ネットワークを構築することを前提とすれば、系統制約問題を避けることができるのではないかと思われる。
例えば、電力系統への依存度の低い地産地消型の電源に対しては買い取り価格をさらに優遇するような仕組みを作ることによって、系統負担の少ない形での再エネ電源の拡大を促すことなどを考えてもいいのではないか。また、地産地消型の再エネ電源をハウス栽培等の農業用電源や熱源として利用出来る仕組みを整えれば、CO2フリーの野菜栽培なども可能になる。
地域ネットワークの調整電源としては、これも分散型の蓄電池や中小規模の内燃力発電などを活用すれば簡単に解決するだろう。燃料に地域のバイオマス資源を活用すれば、極めて環境に優しい分散型の再エネ発電ネットワークが実現できる。こうした地域ネットワークが広がれば広がるほど、大規模火力などの既存の電力ネットワークの負担を少なくできるだけでなく、地域内の余剰電力を既存の広域電力系統に送電(売電)することで、再エネ電力の流通量の増大にも寄与できることになり、地域には売電収入が得られる。
日本の田畑の多くにソーラーシェアリングが導入されている風景を想像してみると、案外、新たな景観として受け入れられるのではないかと期待してしまう。エネルギーも創り出す農業へ。ソーラーシェアリングの普及は、日本の農業スタイルを大きく替えてしまう可能性を秘めているのではないか。
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