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JESAコラム 第59回


風力発電にもっと着目しよう

元東京電機大学 西川尚男

風力発電装置は、空気の流れによって生ずる運動エネルギーを電気エネルギーへ変換する発電装置であり、その発電出力は(1)式で示される。

P=(1/2)・ρ・π・R2・V3・Cw・Cg・Cin・・・・・・・・・・・・・・(1)

※ここでP:発電出力(kW)、ρ:空気の密度(1.225kg/ m3 )、R:回転するブレードの半径(m)、V:風速(m/s)、Cw:風車効率、Cg:発電機効率、Cin:インバータ効率

(1)式より、発電出力は風車の受風面積に比例し、風速の3乗に比例するため、風速の増大に伴い、発電出力は大きく増大し、一方風速変化による出力変動が極めて大きいといえる。

世界的に多く利用されているのが図1に示されるプロペラ形風力発電装置である。 開発当初は図2に示されるようにブレードの直径が15m、出力50kWクラスのものが、2000年代に入ると、直径が100mを越え、 出力2000~3000kWクラスのものが開発され、着実に大型化の方向に向かっている。

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図1 プロペラ形風力発電装置
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図2 風力発電装置の定格出力とブレード直径の変遷

世界の再生可能エネルギーによる発電電力量は、水力発電を除いた時、図3に示すように風力発電の発電電力量が一番大きい。 例えば2013年で見た場合、風力発電設備容量は合計で3.0億kW、年間の総発電量は6300億kWhに達し、 これは世界の年間の総発電量の20兆kWhの約3%に相当する。

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図3 世界の再生可能エネルギー発電量の内訳(2013)

これまでは、米国、ドイツ、スペイン、デンマークが世界の風力発電装置容量の増大に大きく寄与してきたが、 最近では中国及びインドが設置容量を急激に伸ばしており、結果として図4に示されるように、 2015年時点で、中国:1.45億kW,米国:0.74億kW,ドイツ:0.45億kW、インド:0.25億kW,一方日本は0.03億kWと世界で18位と極めて導入量が少ない状況にある。 これは我が国の太陽光発電と比べ、1桁小さい数値である

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図4 世界の風力発電設置容量(2015)

風力発電電力が太陽光発電と同じく、電力系統へ多量に導入されると電力系統の安定性に支障をきたすことが考えられる。 但し風力発電事業者は太陽光事業者と比べ比較的大規模な発電事業者が多いため、何らかの対応策が講じやすい。 その一つが風力発電供給者が行う計画発電である。その概要を以下に紹介する。 電力供給会社と風力発電供給者間で電力供給のルールを事前に定めて置き1日前に風力発電供給者は電力供給会社に例えば図5のような発電計画書を提出し、 約束した発電出力幅を大きく逸脱した場合はペナルテイが風力発電供給者に課せられるというルールの下で運営される。 図5の太線部分が契約した供給電力で、蓄電池を風力発電事供給者側に設置し、蓄電池による充放電を行い、過剰発電時にはオーバー分を蓄電池に充電し、 また不足発電時には蓄電池からの放電により電力供給社へ供給する。 従って風力発電供給者は大きな容量の蓄電池を設置するとともに、気象観測データに基づいた高度な発電予測技術、 出力制御技術を駆使して電力を電力会社へ供給することになる。 風力発電供給者から供給を受けている電力供給会社は風力発電供給者が提示した契約発電計画と、 電力供給社が管轄する地域の太陽光発電量及び需要側の消費電力量の予測結果とを総合的に判断して1日の電力供給計画を立案し、 電力供給社が需要家へ電力供給を行うので電力の安定供給に大きく貢献するものと思われる。

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図5 風力発電の計画発電例

世界各国とも地球温暖化の抑制に向けて風力発電を積極的に取り組んでいるのに対し、日本は風力発電の設置容量が極めて少ない。 日本は風況条件が良い海岸地帯及び陸上より風速が高い海上という風力発電に適した場所が多くあることからもっと積極的に風力発電を増やしていくことが必要である。

補足:近年太陽光発電設備の導入量が全国的に増えたことから、電力会社は太陽光発電設備の増設受け入れを抑えている。 これは春、秋では夏場と比べ一日の電力需要の最大値が夜間電力供給量近くまで低下するため、 その状態で多量の太陽光からの電力が系統に供給されると電力系統では過剰電力状態となる。 一方電力会社は過剰電力対策を講じてはいるものの、太陽光からの電力供給量の増加が当初予測されていたスケジュールより早く達成されていることから、 その対策が追い付いていないことに起因するものと思われる。

上記に示した解決策の一つとして、今回示した風力発電における「計画発電」の考えを太陽光に適用すれば、 すなわち太陽光発電電力供給者(大規模な発電事業者に限定)が蓄電池を設置し、予測される供給電力量を電力会社へ供給することにより、 電力会社は計画的に発生電力の調整が可能となるため、太陽光発電設備の新規導入の受け入れの可能性が高まるものと思われる。 今後は太陽光発電電力供給者と電力会社とのお互いの協力が必要となる。


2017/07/10