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JESAコラム 第58回


再生可能な電気を売る

電力の小売り全面自由化が開始されて、1年が経った。電力小売り事業者の 登録件数は400件に達しているが、 実際に購入先の電力会社を切り替えたのはごくわずかにとどまっているという。

電力の小売り自由化による顕著な変化が見られない原因としては、販売される電気に差がつけられないということが原因の一つだと思われる。 同じ商品がわずかな価格差で売られているだけでは、購入先を替えようという動機付けにはなりにくいということだろう。 「そういう電気がほしかった」「それならば、そっちに替えてみよう」という動機付けである。

系統で送電される電力は周波数や電圧などの電力の室では差が付けられないが、電力の出自を問うことはできる。 どこで発電された電気なのかということである。最も現実的に考えられるのは、 再生可能エネルギーによる電力を特定して販売するということではないかと思われる。

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最近、ようやく再生可能エネルギー電源を特定した電気料金プランを発表する電力会社が出始めた。 自社の持つ発電電源から水力発電による電力を特定してCO2フリー電力として販売するというプランである。 料金プランを見ると基本料金が高めに設定されている他は従来の料金プランと大きな差はないように見える。

系統電力は、多様な発電所の電力を変動する需要量に合わせて発電調整する必要があるため、 電源を特定して料金メニュー化するのは困難だというのが電力各社の見解だったはずなのだが、やろうと思えばできるということだったのか。

現在、日本の再エネ電源の大半は太陽光発電ということだが、太陽光発電の電力に特化した電力料金メニューはまだ本格的になってはいなし、 これからもきたいできそうもない。というのは、現在の太陽光発電の電力のほとんど全ては固定価格買取制度によるFIT電力として電力会社に買い取られているため、 CO2価値を伴う再エネ電力として販売することは不可能な制度になってしまっているからである。FIT制度の制度設計の折に、 系統電力の電源を特定することは困難だという理由により、再エネ電源のCO2価値を流通させないことにしてしまったのだが、それはいつでも、 やろうと思えば替えられるということが、今回の水力発電の電力を特定して販売するという料金プランによって明確になった。

現行の固定価格買取制度では、太陽光発電や風力発電などの再エネ電源の買い取り期間はほとんどが20年間に設定されているが、 いくつか例外があり、早いものは、そろそろ買い取り期間が満了するものも現れてくる。 そうした買取満了電源は新たな買い取り先を見つければCO2価値付きで自由に販売できることになるため、 再エネ電力を売りたい事業者や買いたい需要家にとっては魅力ある電源となると思われる。電力自由化による市場活性化の実現のためには、 こうした買取満了電源による貴重な再エネ電力をどのように活用して需要家にその価値を届ける仕組みを構築していくのか、注目される。

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2017/06/26