JESAコラム 第50回
日本のFIT制度と太陽光発電
日本が再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を取り入れて約5年が経過する。
制度による再エネ発電設備の導入量は2016年9月末現在で3223万kWに達し、FIT導入前に建設され、
固定価格買取制度に移行してきた883万kWを加えると4千万kWを超えている。
これらの再エネによる発電量は、毎月40万kWh~50万kWhとなっており、
年間約500万kWh~600万kWhの再エネ発電が行われていることになる。
これは、ここ数年の電力10社の最近の販売電力量が年間約8千万kWhであることを考えるとその約6~7%に相当している。
長らく新エネ(再エネ)導入が遅々として進まなかった中で、ようやく目に見える形で成果が上がった制度であると評価できる。
FITの導入によって順調に見える再エネ導入量の拡大ぶりであるが、系統連携できないことにより計画しても建設できない事例が増えるなど、 FIT制度は転換点を迎えている。
FIT制度により支えられている日本の再エネ急拡大のほとんどは太陽光発電によっており、太陽光発電の導入量は単独で3千万kWを超え、
再エネ導入量の実に95%を占めている。太陽光発電は、基本的には日当たりの良い空き地や建物の屋上などにパネルを設置して系統連系すれば、
黙っていても発電してくれるという手軽さや、設備の維持管理も特に専門的なノウハウがなくても容易に行えること、
また、FITにより20年間の買い取り期間と価格が保証され、事業性の見通しが確保でき易いことなどにより、競い合うように一気に太陽光発電の建設が行われた。
その結果、3千万kWの導入量に加えて、その3倍近い8千万kW超の建設計画が認定され、建設を待っている状況にある。
こうした太陽光発電の「人気」ぶりは、太陽光発電が日本の気候風土に適した発電手段であるということを如実に表しているともいえる。
しかし一方で、こうした太陽光発電所の建設ラッシュが、連系する電力ネットワークの容量不足というFIT制度の欠点を早期に顕在化させる結果となり、発電した電力は全量を電力会社が買い取るというFIT制度は、電力系統が受け入れられるだけの電力しか買い取らないという、部分的買取制度へと大きく変容することを余儀なくされることになった。
こうした思いがけないFIT制度の変容により、太陽光発電事業には、買い取り価格の低落、連系制約による全量買い取りの停止などの問題から、認定済みの8千万kWの太陽光発電所の全てが建設されるということは困難視され始めている。
FIT制度は開始5年目で早くも限界を迎えたといえるが、限界を迎えたとはいえ再エネ電源の拡大にとっては必要な制度で有り続けるものであり、その上で、再エネの更なる拡大にはFIT制度を補完する新たな仕組みの導入が待たれているのだといえる。それはおそらく、系統連系の必要のない、「地産地消型」のオンサイト電源としての再エネ発電を促進するということになるのではないか。
<高>