JESAコラム 第48回
電力自由化と省CO2とコージェネ
温暖化対策の視点から火力発電について考えている。 化石燃料を大量に消費する火力発電は、地球温暖化の元凶とされており、代替電源の拡大などの対策が求められている。 しかしながら、火力発電の代替手段を見つけることは困難だと見られるのが現状で、 なおしばらくの間は、主要な発電手段として火力発電に頼らざるを得ない状況が続いていく。
火力発電は、CO2の他にも大量の排熱を放出する。 一般的な火力発電の発電効率は40%程度であり、作り出した熱エネルギーの過半のものが利用されることなくムダに捨てられてしまっている。 このムダに捨てられる熱エネルギーを回収利用して化石燃料の使用量を削減し、CO2削減につなげることができるものとして、 コージェネレーション技術が再び注目を集めつつある、ということは既に述べた。
コージェネは、発電利用後の排熱を回収して、多くの場合は給湯や空調用などの熱源として再利用することで熱の利用効率を高める技術であり、 エネルギーを使い尽くす技術としてその評価も高い。 ガスタービンなどの高温排熱は、単なる熱利用の他、蒸気回収して再発電するコンバインドサイクルにより発電利用もできる。 蒸気回収できない比較的低温の排熱は空調や給湯用の熱源として、また、加温用の熱源や最後は温泉や温水プールなどの熱源として利用されている。
排熱の回収利用により、ボイラー燃料の使用量が削減できるのだが、その逆も真なりで、熱供給用に作り出す蒸気をまず発電利用した後に、 排熱をさらに熱利用するという考え方にたつと、安価な電力が作り出せるという考えも成り立つ。 エネルギーコストを熱と電気のどちらかにつけ回すのかというだけなのだが、いずれにしても、熱と電気を同時に併給することで、 熱か電気を作り出すための、エネルギーコストの削減や省CO2にも貢献できるということになる。
しかしながら、コージェネのせっかくの高効率も、作り出した熱や電気を無駄なく利用できなければ、意味がない。 需要地から遠く離れて建設される大規模な火力発電所は、排熱の利用手段がないために大量の熱は利用されないまま捨てられるしかない。 このため、コージェネレーションの立地は需要地に近傍で、熱の需要を伴う施設で利用される。 需要地に建設されるコージェネシステムは、例えばガスタービンやガスエンジンによる数十kW~数百kW程度の発電設備を複数台設置して熱と電気の需要状況に応じてできるだけ効率的に運転するシステムが使われることが多い。 熱需要が多い工場などでは、高温の排熱が得られるガスタービンの利用が多いが、熱よりも電気の必要度が高い場合は、より発電効率の高いガスエンジンシステムが採用される場合が多い。 ガスタービンの発電効率は単独では40%を超えることは少ないが、大型のガスエンジンの発電効率は50%に近づいてきている。
エネルギーの利用効率は極めて高いものの、燃料費などの影響で経済性の観点から、普及に弾みがつかなかったコージェネであるが、 現在進行形の電力・ガス事業の完全自由化市場の中で、負荷追従運転機能が極めて高く再生可能エネルギーの調整電源としても使いやすいことや、 系統電力の出力安定化やピークカット用電源としても活用できることなどが再評価され、普及に弾みがつく可能性が高い。 コージェネシステムの今後が注目される。
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