JESAコラム 第45回
地球温暖化問題の本質
21世紀は水素の時代になるのか。水素社会を目指した取り組みが始まっている。背景にあるのは地球温暖化問題。化石燃料は燃焼によってCO2を排出するが、水素は燃えても水になるだけだ。およそ熱エネルギーの多くは有機物の燃焼によって発生する。有機物は炭素と水素の化合物であり、燃焼によってCO2とH2Oが生じる。地球温暖化問題の顕在化によって、このうちのCO2が温暖化問題の主犯格として取り締まりの対象となってしまった。CO2は温室効果ガスとして温暖化の元凶とされることになったが、CO2排出の元となるエネルギー(熱)の大量排出という、そもそもの問題は、その責任の追及を免れる事態となってしまっている。
温暖化を問題とするということは、化石燃料の燃焼による大気中への大量の熱の放出こそがまず問われるべきだと思うのだが、もっぱら問題とされるのは大気中のCO2濃度というのは、本質的な問題を置き去りにしてしまっているのではないかという心配がぬぐいきれない。
もっとも、大気中のCO2濃度の上昇は、化石燃料の大量消費と相関関係があると思われるので、CO2濃度の上昇を抑制するために、化石燃料の消費を抑えるということは、正しいアプローチの一つであるとはいえる。しかし、CO2濃度の上昇は化石燃料の大量消費を始めとするエネルギー排熱の大量放出に起因しているのだと考えると、温暖化対策の本質はCO2ではなく、温排熱の量をどのように抑制するのかということになるのではないか。つまり人為的に造られ排出される熱量が膨大すぎる故に、地球規模の気候変動を巻き起こしてしまっているのではないか。CO2排出量はその結果として生じているのであり、エネルギー起源のCO2を抑制することが温暖化対策の根源的な解決につながるというのは、素直に頷けない思いがある。
温暖化の原因をひたすらCO2の増加に求め、CO2は排出しないが大量の熱は排出するというものを見逃してしまうことは、本質的な温暖化対策の構築を阻害してしまうことになるのではないか。
その最たるものとして原子力発電が考えられる。原子力発電は、一つ一つの発電設備の規模が大きく、最新のものでは、100万kW/基を超えるものが多い。それに応じて、大量の排熱が温排水として海や川などに排出されている。温排水は結果的には大気と熱交換され、気温の上昇に結びつくことになるが、こうした、原子力発電や大規模火力発電の排熱がどの程度気温の上昇に影響を与えているのかという研究発表はあまり注目されず、聞く機会も少ない。しかしながら、化石燃料を燃やす火力発電は削減対象とされても、原子力発電は発電時にCO2を排出しないものとして、石炭や石油火力に替わる温暖化対策に有効な電源として位置づけられることになってしまっている。
地球温暖化問題は、本当にCO2の排出抑制だけで解決できるのか、どこかで間違ってしまっているのではないか。今一度立ち止まって考えなおしてみる必要があるのではないだろうか。
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