JESAコラム 第39回
電力自由化と分散型発電
電力の小売り自由化が開始され、話題となっている。
小売り自由化で何が変わったのかといえば、電気を購入する電力会社が自由に選べるようになったということだろう。
これまでは、地域の電力会社から購入するしかなかった電気だが、新たに電力販売事業に参入する事業者があいついでおり、
電力料金の比較サイトなども提供されている。
ようやく開始された感のある電力自由化だが、日本の電力自由化の歩みには、実は以外と長い歴史がある。 今日に繋がる日本の電力の制度改革は、1995年の独立発電事業者の参加を認める第1次制度改革に始まり、 1999年には特高需要家を対象にした小売りの部分自由化などを導入した第2次制度改革、 自由化対象を500kW以上の高圧需要家にまで拡大した2003年の第3次制度改革、さらに、2008年の第4次制度改革と、 競争原理の導入による安価な電力供給を目的に4次にわたる制度改革が進められたが、発電から送電、 需要家を独占的に持つ電力会社に対抗できる新規参入事業者が出現することもなく、部分自由化による制度改革は成果らしい成果を上げられなかった。 この反省にたち、現在進められている第5次制度改革は、電力事業制度に根本的な変化を促す観点から、 既存の電力会社と競争できる事業環境の整備を目的にした「発送電分離」を改革に中心に据え、 ①送電網の全国規模での運営を行う「広域運営機関」の設立 ②小売りと発電事業の完全自由化 ③送電部門の別会社化 を求め、公的管理の下で公平な送電網の運用を行うという3つの柱による「電力システム改革」として制度設計された。 2012年度に第1段階、そして今年4月の第2段階が開始されたところであり、特に首都圏を中心に既存の電力会社間の競争も見られるなど、 これまでとは異なる競争市場が生まれつつあるように見える。 さらに2018年度からは第3段階の実質的な「発送電分離」へと段階的に進められることになっており、 今後は発電する電気の質や価格を競い合う、発電市場の変化も期待される。
これまでの改革で電力事業は、「発電」「送電」「小売り」の3部門に国のライセンス事業として分割され、
発電と小売り事業は自由化部門として、誰もが自由に発電し、発電した電力を自由に販売できるように市場開放されたのである。
こうした自由化された市場では、電力の小売り部門だけでなく、販売する電気の質を問う発電市場の変化も容易に想像できるところであり、 低炭素や高効率、地産地消などの環境価値が購入する電力の選択肢に加わることで、 これまで自家発電の限られた市場に閉じ込められていたコージェネシステムなどの分散型電源や再生可能エネルギーの活用の場が違った形で 展開される大きな市場変化が期待されるところである。
自由化された電力市場の中で、電力供給システムがどう変わっていくのか。 本コラムでは、自家発などの分散型電源や再エネ電源市場の活用について考えてみたいと思う。
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