JESAコラム 第24回
水素エネルギー(3)
みなさん、こんにちは。前回までに概要を紹介した水素エネルギーについて、今回は具体的な利用例を紹介したいと思います。
水素エネルギーは今日、自動車から発電設備の燃料まで、幅広く使われています。 主に燃料として使われるのですが、現代社会においての「燃料」というものの重要度から、利用される範囲が広がっているのです。
自動車への活用例として、代表的なものはやはり水素を燃料そのものとして扱う方法です。 前回紹介したように、水素を利用することでCO2の排出を抑えることができ、環境への影響を最小限にとどめることができます。 さらには水素によるエネルギー効率は非常に高く、さらには無限にあるといってもいいほどの豊富さを持ちます。
また、水素エネルギーの利用法が広まり、向上することで、燃料電池の用途も拡大し、燃料電池自体の性能向上や低コスト化も見込めます。
こうした自動車への活用、牽いては運輸部門への活用は、様々な副次効果を生みます。
まず、より一層の耐久性・経済性が要求される業務用車両へ対応するための、技術の促進が期待できます。 次に、多様な用途への活用により、部材の流通が増加し、量産性の向上が見込めます。 さらには、水素事業全体の需要向上による、水素の採算性の改善や価格の低減、雇用の増加までもが見込めるのです。
運輸部門での具体的な利用例に、燃料電池バスがあります。
現在日本ではまだ実証中なのですが、海外ではすでに実用化の例が多くあり、日本での実用化もそう遠くないでしょう。
バスに燃料電池を利用する場合、容量の大きさから非常用の電源としての役割が期待されています。 また、同じく自動車50台分もの水素を需要とする容量の大きさから、水素事業における重要な需要源としても期待されています。
その他の利用例として、規格が乗用車のタクシーやハイヤー、さらにはフォークリフトまで利用されています。
フォークリフトについては、目的の一つとして、工場内における排出ガスの削減があります。 もともと工場には排出物の削減が求められているので、その一環とも言えるでしょうか。
もともとは、同様の目的による電動フォークリフトが利用されていたのですが、稼働時間の短さや、それに対する充電時間の長さが問題になっており、現状開発は頭打ちとなっていました。 そこで注目されたのが水素による燃料電池というわけです。
現在我が国では、4台の燃料電池フォークリフトを活用して実証中です。 北米ではフォークリフトを燃料電池初期需要の創出用途の一つに位置付け、これまでに導入支援によって燃料電池フォークリフトは実用化され、すでに4000台以上の導入が進んでいます。
また欧州では200台規模での実証が行われており、今後本格的に導入が進む見込みです。
これ以外にも、小さいものではバイクなどの二輪車から、大きいものでは船舶や鉄道などにも対応して開発されています。
このように、特に運輸事業において、様々な利用がなされています。前回までに紹介したような課題をクリアし、水素燃料が生活の一部となる日もそう遠くはないでしょう。