JESAコラム 第25回
北海道の再生可能エネルギー利用(1)
みなさん、こんにちは。
今回は、北海道における、再生可能エネルギーの水素エネルギーへの転換についてご紹介したいと思います。
太陽光からバイオマスまで、北海道には豊富な再生可能エネルギーがあります。
しかし、発電した電力に見合うだけの需要が近隣地域に存在しないという、大きな課題があります。
特に再生可能エネルギーの多い東部には十分な送電ネットワークが整備されていない為、発電した電力を他の地域に送る容量も限られます。
そこで期待が高まるのが、水素サプライチェーンの展開です。
再生可能エネルギーで造った電力が大量に余っても、水素に転換すれば遠隔地まで運んで燃料に利用することができます。
すでに道内では、3つの地域で水素サプライチェーンの展開が始まりました。水素の製造から輸送・利用までの一大ネットワークを北海道内に形成していきます。
一つ目に紹介するのは、北海道のほぼ真ん中に位置する鹿追町(しかおいちょう)です。山に囲まれた高原の町では約2万頭にのぼる乳牛を飼育しています。 乳牛から毎日大量に発生する糞尿は町営の「環境保全センター」に集めて処理します。1日あたりの処理量は130トンにのぼります。
このセンターの中には、糞尿を発酵させてバイオガスを生成するプラントがあります。2種類の発酵槽を使って生成したバイオガスは発電機の付いた燃焼装置に送って、電力・温水・蒸気をセンター内の各施設に供給しています。
発電機の能力は200kW(キロワット)で、1日に4000kWh(キロワット時)の電力を供給することができます。 一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算すると400世帯分に相当します。
ただしバイオガスは1日に3900立方メートルも発生するため、発電で使い切れない余剰分は燃やして処理しています。 バイオガスの主成分はメタンガス(CH4)で、水素(H2)を作ることが可能です。 このバイオガスプラントに水素の製造装置を導入するプロジェクトが始まっています。
製造した水素は鹿追町内だけではなく近隣の帯広市にも輸送して、燃料電池や燃料電池車・燃料電池フォークリフトなどで利用する構想です。 環境省が推進する「地域連携・低炭素水素技術実証事業」の1つとして、2015~2019年度の5年計画で実証を進めていきます。
バイオガスプラントには水素製造装置に加えて、水素ガス貯蔵タンクや水素ステーションも併設する計画です。 タンクに貯蔵した水素ガスはボンベに入れて畜産農家や競馬場まで運び、燃料電池を使って電力と温水を供給できます。 家畜の糞尿から作った再生可能エネルギーを水素に転換して、送配電ネットワークを使わずに農業地域の広い範囲で地産地消する試みです。
今回は、まず一つ目として、鹿追町の紹介をしました。次回も、北海道の再生可能エネルギーと水素燃料事業の例を紹介したいと思います。
引用:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1604/05/news023.html