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JESAコラム 第7回


防災用自家発電装置に必要な保護装置とその機能

防災用自家発電装置に法令で義務づけられている保護装置のうち、電力の供給を停止する重要なものは、表1のとおりです。
保護装置の動作値は表1の値を満足するものである事とされています。

表1.保護装置の設定範囲
保護装置 内燃機関 ガスタービン
1 過電流 定格電流の135%以下
2 過回転 定格回転速度の116%以下 定格回転速度の111%以下
(多軸式の場合116%以下)
3 断水又は
水温上昇
製造者指定値以下 --------
4 ガス温度上昇 -------- 製造者指定値以下

これらの保護装置が動作すると遮断器を開放し、過電流以外では燃料の供給を遮断して原動機も停止します。 同時に、ベルやブザーなどで警報音を発生して注意を促し、ランプなどで、 どの保護装置が動作したかを表示して復旧の便宜を図ります。

これら以外にも、待機中に発電装置が電力を供給できなくなる要因が検出された場合には、警報を発生する必要があります。

保護装置の機能は、発電装置が運転できなくなる、又は人体に危険を及ぼす恐れのあるような不具合の発生が差し迫っている事態になったときに警報を発生し、可能な限りその危険を回避するために必要な制御を自動的に行うものです。

防災用では、その使用目的から保護装置を必要最小限度のものだけとしているので、それだけに保護装置の信頼性が高いことと十全に保全されていることが求められます。ほとんどすべての保護装置は電気信号を利用していますから、 外部からのノイズの混入とか電線の断線・接触不良といった偶発的な不具合要因にも注意が必要です。

例えば、常時通電しているスイッチを検出器にすれば、待機中に断線しても警報がでますから、 速やかに復旧することができるでしょう。発電装置とは違う分野でのことで、嘘のような昔話ですが、 通電してブレーキを掛けるように作られた電車が回路の断線で事故を起こしたという例もあります。 熱電対とか電磁ピックアップのような電気信号用の配線にも、断線警報回路を備える他、 外部からのノイズの混入による誤動作を防止するためにシールド線を使用し、シールドの一端だけを接地します。

過電流

過電流は、過負荷又は短絡で発生し、通電部の過度の温度上昇をもたらします。 過電流の検出には、熱動形過電流継電器(サーマルリレー)又は誘導円盤形過電流継電器を使用します。 熱動形は回路の電流を電気ヒータに通してバイメタルを暖め、その変形を利用してスイッチを動作させます。 誘導円盤形は、コイルと金属製の円盤を組み合わせて、円盤に発生する渦電流によって発生するトルクを利用してスイッチを動作させます。 原理的には電力量計と同じものです。最近では電子回路による静止形のものが普及してきているようです。

これらには動作するのに多少の時間遅れがあり、電流の設定値からの超過分が多いほど時間遅れが短くなるという特性がありますから、 電流が規定値を多少超えたとしても、その時間が十分短ければ、過電流は検出されません。 過渡的な瞬時の過電流を許容しているのですが、この特性が電気品の過度の温度上昇を防止しながら発電装置の運転の継続性を確保します。 この保護機能は、短絡事故の際には大きな電流が通るので、瞬時に遮断器を開放します。

図1は、誘導円盤形の過電流継電器の特性の例を示すもので、黒色のグラフは過負荷、青色のグラフは短絡に対するものです。

過電流は、電気系統だけに対する保護機能ですから、一般には原動機を停止しません。過電流の原因がなくなれば再び遮断器を投入することができます。

過回転

通常はガバナが原動機の速度を制御しているので、この過回転の保護装置は、そのバックアップとして機能します。 過回転は、部品の破損から発電装置の機能の喪失につながるばかりではなく、人体にも危害を及ぼしかねない危険な現象です。 ディーゼルエンジンでは潤滑不良に陥ってピストンとシリンダが焼き付く、コネクティングロッドがクランクケースを破る、 ガスタービンではタービン翼が根本からちぎれ飛び、アンバランスになったロータのタービンディスクが脱落する、 といったような想像もしたくないようなことが起こりかねません。

一般的には、原動機主軸の回転速度を検出し、これが規定値を超過した場合に遮断器を開放し原動機を停止します。 二軸式のガスタービンの場合には、それぞれの主軸にこの保護機能を設けます。

過回転の検出には直流発電機(タコジェネレータ)の電圧が回転速度に比例する特性を利用するもの、 遠心力を利用するフライホイールの運動によって接点を動作させるもの、電磁ピックアップのパルス信号を計測するものなどがあります。 電磁ピックアップは、原動機を運転しなくてもパルス発生器を使用して過回転保護装置の動作を確認できるので点検には便利ですが、 パルス信号にノイズが混入すると正常な動作ができませんから、信号線にシールド線を用いるだけでなく、 指定されたギャップで取り付けて適切な信号のレベルを確保すること、ピックアップが振動してパルスの数を増やさないように固定ねじに緩み止めを施すことなどにも留意します。 保護装置やガバナとは別に、回転速度が保護装置の設定値に到達しないように燃料流量を制御する装置もあります。

断水又は水温上昇

冷式のディーゼルエンジンに必要とされる保護機能で、シリンダの冷却水の温度が過度に上昇した場合に動作します。空冷式の場合には、シリンダ自体の温度上昇に対して保護機能を設けます。 シリンダの温度が上がりすぎると、潤滑油の粘度が下がってスカフィング(焼き付き磨耗)を起こしやすくなります。

冷却水又はシリンダの温度の検出には、測温抵抗体や熱電対などからのアナログ信号又は温度スイッチを利用します。 測温抵抗体は白金の抵抗値の変化、熱電対は二種類の金属の接合部に発生する起電力で温度を計測するものです。 熱電対の信号配線には熱電対の種類に適合する補償導線(JIS C1610「熱電対用補償導線」参照)を使用します。 断水は、冷却水の流路に設けたフロースイッチや圧力スイッチ、冷却水タンクに設けたレベルスイッチなどで検出します。

ガス温度上昇

ガスタービンに必要とされる保護機能で、タービンを通過する燃焼ガスの温度を検出します。 この温度が過負荷以外の原因で過度に上昇した場合には、まず圧縮機の汚れかタービンの破損による効率の低下が疑われます。 どちらが原因かは、十分な運転データがあれば計算で推定できますし、ファイバースコープで内部を覗くことができれば直接的に判定できるでしょう。 この温度が上がりすぎるとタービンブレードの材料の強度が低下して、それらの一部が欠け落ちるということが起きます。 さらには、そのかけらがノズルや後段のタービンを破壊する、ロータのバランスが崩れるということにもなり得ます。

タービンガス温度は、初段タービンノズルの入口で最も高いのですが、この温度は1,000°Cを超えるレベルにもなるので、 熱電対を使用しようとしても伝熱誤差のために正確に温度を検出できない上に、高温のガスに曝される細い熱電対には十分な寿命が期待できないという困難があります。 一般には、タービン入口温度とタービン下流の温度に対応関係があるので、タービンの中間段又は出口の温度レベルの低い場所で温度を検出します。

少し難しい話になってしまいましたが、保護装置は皆様がお持ちの発電機等を安全に動作させるために必要なものです。是非ご理解に努めていただきたく思います。


2015/11/30