JESAコラム 第5回
建築基準法における防災用の自家発電設備について
みなさんこんにちは。
防災用の自家発電設備は、消防法令以外に建築基準法令でも設置が義務付けられています。
では、どんな場合に義務付けられるのでしょうか。
建築基準法令では特定の建築物に対し、建築設備(注1)の設置が義務づけられています。 この建築設備の中で防災設備としての機能を有するもの(注2)には、常用電源が遮断した場合に備え、予備電源(建築基準法上の呼び方)の設置が義務づけられています。 防災用の自家発電設備は、この予備電源の一つとして設置されるものです。
注1:建築基準法では、建築設備を「建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、
昇降機若しくは避雷針をいう。」と定めています。
注2:予備電源の設置が義務づけられている「非常用の照明装置、非常用の進入口、排煙設備、非常用のエレベーター、
非常用の排水設備、防火戸・防火シャッター等、防火ダンパー等・可動防煙壁」です。
防災用の自家発電設備の構造・性能について、消防法施行規則第12条などで具体的な基準が定められています。 しかし建築基準法令においては、予備電源の設置義務こそ規定されているものの、予備電源の構造・性能については運転時間以外に具体的な基準は設けられていません。 建築基準法令により予備電源として設置される自家発電設備は、消防法令で定める非常電源も兼ね、 防災電源として設置されることが多いことから、構造・性能は消防法令の規定に準じるものとして運用されています。
では、予備電源の設置が義務付けられている建築設備には、どのような種類の予備電源が適用できるでしょうか。 これは、建築設備の種類に応じ、適応できる予備電源と有効に作動できる容量が表のように定められています。
建築設備と適応予備電源 | ||||||
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建築設備 | 自家用発電装置 ※1 |
蓄電池設備 | 自家用発電装置と 蓄電池設備※2 |
内燃機関 ※3 |
容量 (以上) |
|
特殊建築物 | - | ○ | ○ | - | ||
非常用の 照明装置 |
一般建築物 | - | ○ | ○ | - | |
地下道(地下街) | - | ○ | ○ | - | ||
非常用の進入口(赤色灯) | - | ○ | - | - | 30分間 | |
排煙装置 | 特別避難階段の付室 非常用エレベーターの乗降ロビー |
○ | ○ | - | - | |
上記以外 | ○ | ○ | - | ○ | ||
非常用のエレベーター | ○ | ○ | - | - | 60分間 | |
非常用の排水設備 | ○ | ○ | - | - | ||
防火戸・防火シャッター等 | - | ○ | - | - | 30分間 | |
防火ダンバー等・可動防煙壁 | - | ○ | - | - |
- ※1 用途により予備と常用に区分されるが、常用は予備電源対応の要件を満たすもの。
- ※2 蓄電池設備と40秒以内に始動する自家用発電装置に限る。
- ※3 電動機付のものに限る。(昭和46年住指発第510号)
なお、表中の自家用発電装置とは、自家発電設備の建築基準法上の呼び方です。
一方、予備電源として設置される自家発電設備の設置場所については、建築基準法令では具体的な基準は定められていません。 しかし、消防法令で定める非常電源も兼ねて設置される場合が多いことから、消防法令の規定が準用されています。
尚、「建築設備設計・施工上の運用指針2003年版」(国土交通省住宅局建築指導課・日本建築行政会議編集)では、設置場所等を原則次のとおりとしています。
- 装置を屋内に設置する場合は、耐火構造若しくは準耐火構造の壁、床で区画された専用室内とする。
- 装置の正常な機能を阻害する場所には設置しないこと。
- 装置が正常に機能するための機器相互の保有距離、操作又は保守のための必要な保有距離を確保すること。
- 操作部(前面)1.0m以上
- 点検を行う面 0.6m以上
- 装置を設置する室には燃焼に必要な空気量を供給する等のため、外気に通じる 有効な換気設備を設けること。
給排気ダクトを設け、換気を行う場合は専用とし、次のとおりとすること。- 防火区画を貫通しない経路とすること。
- 防火区画を貫通する場合は、耐火措置をしたダクトを用い、防火ダンパーを設置しない等の対策を行うこと。
- 内燃機関の排気管は専用とし、直接屋外に開放するか又は煙突に接続すること。
共用煙突に接続する場合は、他の設備の排煙の逆流に留意すること。(図1)
建築基準法施行令第112条第9項(6ページの※1)の規定に該当する一般排気塔等には接続しないこと。
排気管の断熱については、同施行令第115条第1項第三号(6ページの※2)の規定を準用するものとする。 - 装置のための換気設備、当該室の照明器具への電源は、自家用発電装置に係わる電源に切り替わっても使用できること。
- 同施行令第129条の2の4(7ページの※3)の規定による耐震措置を行うこと。
- 燃料等の危険物の取り扱いについては、所轄消防機関と打ち合せすること。
図1.共用煙突に接続する場合
(a)可
(b)否
※1:(防火区画)建築基準法施行令第112条第9項
9: 主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物の住戸の部分(住戸の階数が2以上であるものに限る。)、 吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分 (当該部分からのみ人が出入りすることのできる公衆便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)については、 当該部分(当該部分が第1項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分でその壁(床面からの高さが1.2m以下の部分を除く。) 及び天井の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この項において同じ。)の仕上げを準不燃材料でし、 かつ、その下地を不燃材料又は準不燃財力で造ったものであってその用途上区画することができない場合にあっては、 当該建築物の部分)とその他の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く) とを準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。 ただし、次の号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りではない。
一 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなっている部分、 階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったもの
二 階数が3以下で延べ面積が200㎡以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは供同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、 かつ、床面積の合計が200㎡以内であるものにおける吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分
※2:(建築物に設ける煙突)建築基準法施行令第115条第1項第三号
三 煙突は、次のイ又はロのいずれかに適合するものとすること。
イ、次に掲げる基準に適合するものであること。
- 煙突の小屋裏、天井裏、床裏等にある部分は、 煙突の上又は周囲にたまるほこりを煙突内の廃ガスその他の生成物の熱により燃焼させないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
- 煙突は、建築物の部分である木材その他の可燃材料から15cm以上離して設けること。 ただし、厚さが10cm以上の金属以外の不燃材料で造り、又は覆う部分その他当該可燃材料を煙突内の廃ガスその他の生成物の熱により燃焼させないものとして 国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部分は、この限りではない。
ロ、その周囲にある建築物の部分(小屋裏、天井裏、床裏等にある部分にあっては、煙突の上又は周囲にたまるほこりを含む。) を煙突内の廃ガスその他の生成物の熱により燃焼させないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
※3:(建築設備の構造強度)建築基準法施行令第129条の2の4
法第20条第一号、第二号イ、第三号イ及び第四号イの政令で定める技術的基準のうち建築設備に係るものは、次のとおりとする。
一、建築物に設ける第129条の3第1項第一号及び第二号に掲げる昇降機にあっては、 第129条の4及び第129条の5(これらの規定を第129条の12第2項において準用する場合も含む。)、 第129条の6第一号並びに第129条の8第1項の規定(第129条の3第2項第一号に掲げる昇降機にあっては、 第129条の6第一号の規定を除く。)に適合すること。
二、建築物の設ける昇降機以外の建築設備にあっては、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いること。
三、法第20条第一号から第三号までに掲げる建築物に設ける屋上から突出する水槽、煙突その他これらに類するものにあっては、 国土交通大臣が定める基準に従った構造計算により風圧並びに地震その他の振動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることを確かめること。
法令の遵守がニッポンの“あんしん”を支えることになるとJESAは確信します。
今一度、皆さんも基準を確認されてみると新しい発見があるかも知れません。