JESAコラム 第76回
再生可能エネルギーから水素へ
(徳島県の取り組み)
東京電機大学 枡川重男
水素グリッド構想
今回は徳島県の取り組みを紹介する。徳島県は水素社会の実現に向けた取り組みとして,水素グリッド構想を立ち上げ(1), 昨年はその一環として,県本庁舎の敷地内の再生可能由来のオンサイト型水素ステーションを四国として初めて導入している。 県庁の屋上に10kWの太陽光発電パネルを設置し,太陽光発電の電気で水電気分解のCO2フリー水素を製造,県庁の公用車に供給している。
県内では事業者の苛性ソーダ製造過程から大量の水素が生成されおり,製品の製造に利用されるほか,他の事業者へ原料として供給される。 また,副生水素は純度が高く,燃料電池の燃料として期待されている。しかし,生成に必要な設備は国の水素ステーション設備の対象外である。 そこで,「資源の有効活用」と「エネルギーの地産地消」の観点から,県で生産される水素の「FC燃料として活用」するために, 国に補助金の新設・拡充に向けた政策への提言を行うと同時に,県として支援を行うとしている。
FCVは電気自動車に比べて5倍以上の電力供給能力を有している。そこで,災害時には避難所で非常用電源として利用することで,地域の防災力強化が期待できる。 徳島県では県全域での展開を目指している。
2015年に策定された「徳島県水素グリッド構想」では,①FCVの普及,②水素ステーションの整備,③水素エネルギーの地産地消,④水素を非常電源として起用,今年度はFCVを導入する県内の民間団体を対象に1台100万円(3台まで)の補助金を用意するなど,FCVの普及に取り組んでいる。
さて,その他の自治体の取り組みを見てみると,例えば,東京都では東京オリンピックに向けて,燃料電池バスの営業運行開始を計画している。 埼玉県では下水道消化ガスから水素製造する設備を設置する(2)。その他,川崎重工業,千代田化工建設など,多くの企業が水素の実用化に取り組んでいる。
世界は水素社会を目指している。本気で取り組まなければ,世界から取り残されてしまうかもしれない。
水素の様々な製造方法
出展:徳島県水素グリッド構想より
参考資料
- 徳島県水素グリッド構想「脱炭素社会の実現へ」
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2015110200064/files/hydrogen-grid-initiative.pdf,(参照,2018.04.10) - 公共下水道施設における消化ガスからの水素製造実証試験の実施について
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/151218-02.html(参照,2018.04.10)