JESAコラム 第75回
シェアリングエコノミーその1
シェアリングエコノミー(共有経済)とは
元東海大学教授 片岡信弘
現在、シェアリングエコノミーが脚光を浴びています。何回かにわけてこれの解説をしたいと思います。
1.シェアリングエコノミーとは
シェアエコノミー協会の定義によれば、「場所・乗り物・モノ・人・お金などの遊休資産を対像にして、インターネット上のプラットフォームを利用し、個人間で貸借や売買、交換を実施する新しい経済」と定義しています。
遊休資産の活用としては、宿泊場所やオフィスや自宅の余っているスペースなどの場所シェア、車自体や車の相乗(ライドシェア)による乗り物のシェア、使っていない道具や物のシェア(売買)、自身のスキルや時間を提供する人的資源のシェア、クラウドファンデングよるお金のシェアなどがあります。
これにより、これまで注目されていなかった「遊休資産」が、ネット上のプラットフォームを通じて、新たな価値を持つこととなります。利用する側は、比較的安い値段でこれらのものが利用できる一方、提供する側は、今まで余っていたものを使って副業や商売ができメリットがあります。
このようなサービスが意味するところは、図1に示すように従来は企業が主体となって個人に物やサービスを提供していた縦型経済であったのに対して、個人同士が提供者になったり消費者になったりする横型経済への変遷である点です。
図1 経済活動の縦から横への変遷
2.シェアリングエコノミーの効用
シェアリングエコノミーの効果としては、遊休資産の活用以外に下記のような効果が期待されます。
- 社会課題解決の役割
不用品の売買は、廃棄物の減少に繋がりや環境への負荷の軽減に繋がります。人的資源の活用は、既存の雇用形態での労働が難しい人が仕事を得られたり、気軽に育児や家事の代行を依頼できたりします。
- 地方創生への役割
地方での空き民家のシェアは宿泊、体験など観光客呼び込みの起爆剤として、地域課題を解決する方策としても注目されています。また、ライドシェアは過疎地域の交通手段として機能する可能性もあります。
- 人の繋がりの構築
古い時代では、近所の人と物の貸し借りや食料品のやりとりを日々行っていました。シェアリングエコノミーの利用は、古い時代と同様に利用者同士の人の繋がりの構築に役立ちます。サービスを受ける側、提供する側のメンバー同士のコミュニケーションが生まれることが期待されます。
3.シェアリングエコノミーの経済規模
平成28年版情報通信白書の「第3章 IoT時代の新製品・サービス」によるとシェアリングエコノミーの経済規模の予測は図2、図3に示すようになっています。
日本は、まだ500億円程度ですが、世界経済規模予測では、2025年には、30兆円以上になると予測されています。日本も今後大きく伸びることが予測されます。
- 図2 シェアリングエコノミーの世界経済規模
- 図3 シェアリングエコノミーの日本経済
(平成27年版情報通信白書 特集テーマ ICTの過去・現在・未来」より)