about

JESAコラム 第71回


バイオマス発電

東京電機大学 枡川重男

日本の生ごみ

皆さんは日本の生ごみの事情をご存知でしょうか。 2004年のJFSニュースレターNo.17によれば、日本では年間約4億トンの産業廃棄物と約5000万トンの一般廃棄物が出ています。 主に家庭から出る一般廃棄物のうち、約2000万トンが「生ごみ」と呼ばれる食品廃棄物です。この重量は廃棄される自動車の4倍近くになります。

この約2000万トンの食品廃棄物のうち、「製造段階」で出るものが約18%、流通やレストランなどの事業系から出るものが30%、 残りの52%が家庭からでる生ごみです。日本の家庭から、年間約1000万トンの生ごみが出ている計算になります。 家庭からでる料理や食べ残しの生ごみはほとんどリサイクルされずに、焼却・埋め立て処理されています。

生ごみを処理するときに発生するCO2の量はどれだけあるか。「NPO法人生ごみリサイクル全国ネットワーク」(2011.09.15参照)によると、標準生ごみの場合、

  • 1トンを焼却すると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2051.3kgのCO2を排出。
  • 1トンをバイオ型生ごみ処理器で処理すると ・・・・・・・・161.0kgのCO2を排出。
  • コンポスト容器あるいは直接土壌へ戻す方法で堆肥化すると・・ 18.0kgのCO2を排出。

(堆肥化の際メタンガスを出さない条件の下)

家庭から出る生ごみの量と焼却処分によるCO2の発生量を掛け合わせれば、私たちが大量のCO2を発生していることがわかるはずです。

バイオマス発電

都道府県すべてとはいきませんが、バイオマス発電は広がりつつあるのではないでしょうか。 例えば、新潟県長岡市では平成25年7月から生ごみバイオマス発電センターが本格的に稼働しています。 平成16年から市民協働でごみの分別に取り組み、地域性に適した生ごみバイオガス化に成功、平成24年度と比較すると燃やすごみの量が約2トン減少、 発電した電力の余剰分は電力会社に売電するなど、様々なメリットが生まれています。
image1image2
(長岡市環境施設課、H30.01.14参照)

横浜市では、図のように、ごみ焼却場に併設してバイオマス発電も検討しているようです。 バイオガス化施設を設置して、そのガスを燃料電池で発電する場合、バイオマス化施設を併設しない場合より、 約1600kWh/日のエネルギー増加が見込まれるとのことです。これは、約130世帯が使用する電力に相当するそうです。
image3
(横浜市資源環境局、H30.01.14参照)

イスラエルのベンチャー企業が、図のような簡単なバイオマス装置を開発。発生するガスを家庭の燃料に使用します。 ガスの配管等の変更は必要ですが、1日6リットルの生ごみを処理して、一般家庭の1年間の発電で発生する6トンのCO2の排出を防ぐことがでるそうです。
image4image5
Home Biogas:https://greenz.jp/2016/05/26/home_biogas/(H30.01.14参照)

私たちは毎日生ごみを出しています。この生ごみを有効に活用すれば、焼却する生ごみの量が減り、CO2も削減され、 エネルギーを生み出すことができます。 おまけに液肥もついてくることを忘れてはいけません。市町村の経費削減、地域住民の共働共生、温暖化対策への寄与などメリットが多いはずです。 未来のために、自治体や市民が共に知恵を出して、生ごみを見直してはいかがでしょうか。

2018/1/29