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JESAコラム 第62回


地熱発電利用の拡大に期待する

元東京電機大学教授 西川尚男

再生可能エネルギー電源の中で、現在太陽光と風力発電が注目されているのに対し、地熱発電はあまり脚光を浴びていない。以下に地熱発電の現状を紹介する。

地球の内部には図1に示すように固結マグマ溜まりがあり、その上に深部熱貯留槽があって、熱水あるいは蒸気が溜まっている。この熱水や蒸気を利用して発電する方法が地熱発電である。地熱発電は発電出力の変動が大きい太陽光及び風力発電と異なり、熱水や蒸気が継続的に供給されるため、電力変動が少ない安定した電源と言える。その結果、太陽光発電の稼働率は12%、風力発電は20%~30%(陸上:20%、洋上:30%)であるのに対し、地熱発電は70%と高い。これは同じ発電容量の装置を採用した場合、地熱発電の1年間の総発電量は太陽光や風力発電より、はるかに多いことを意味する。

図1 地熱貯留槽
(註:稼働率=(1年間総発電量)/(装置の定格発電容量*8760h))

実用化されている地熱発電は大きく下記の3つに分けられる。

  • 蒸気発電:深部熱貯留槽に蒸気が大量に存在する場合、図2に示すように直接蒸気を取り出して発電する発電方式である。

    図2 蒸気発電
    • (註)
    • 背圧式:タービンからの排出蒸気を直接大気へ放出する方式
    • 復水式:タービンからの排出蒸気を復水器で冷却し、水分として回収する方式
  • 熱水卓越型発電:貯留槽に高温で高圧の熱水が溜まっている場合、図3に示すように地上へ熱水を取り出した時の熱水温度はそのままにして、圧力のみ貯留槽より低下させることにより、熱水は水分を含む蒸気に替わり、その水分を含んだ蒸気を汽水分離器に通すことにより、水分が取り除かれた蒸気となり、それをタービンへ供給し、発電に利用する発電方式である。

    図3 熱水卓越型発電
  • バイナリ―発電:地下の温度や圧力が低く熱水しか得られない場合、図4に示すように、イソプタン、イソペンタン、代替えフロン、アンモニアなどの低沸点媒体を熱水で沸騰させて、ガス化させタービンへ供給して発電に利用する発電方式である。尚バイナリ―発電方式はこれまで上に述べた二つの発電方式と比べ、熱交換器、低沸点媒体を別に使用するため、建設コストは高くなる。

    図4 バイナリー発電

世界の地熱発電の潜在量を表1に示す。活火山の多い国ほど地熱発電潜在量が多い。 一方世界各国の地熱発電設置容量と「地熱発電設置容量/地熱発電潜在量」の関係を表2に示す。 日本は地熱発電潜在量が多い国であるのに対し、設置容量が極めて少ない。

その理由の一つとして地熱発電資源量が国立公園特別保護地区に多くあることに起因する。環境省は深部熱貯留槽から蒸気あるいは熱水を取り出す方法として斜め堀を実施することにより公園区域の内側1.5km未満を利用可能区域となり、その発電容量は636万kWに達すると推定している。

また上記は150℃以上の温度を対象としているが、温度の低い53~120℃の温泉水に対してはバイナリ―発電方式を適用することにより833万kWが開発可能となる。また1例として現在の温泉施設では泉源から湧き出てくる温泉水を熱交換器を利用して50℃~60℃に冷やしてし、温泉水として使っているが、この熱交換器の一部の箇所にバイナリ―発電装置を設置することにより、適温の温泉水供給と電力発生を可能とすることができ、一挙両得といえる。

地熱発電は太陽光及び風力発電と比べ安定した電力を供給できる発電源であるのみならず、我が国は地熱発電資源に恵まれた国である。今後ますますの地熱発電の利用を期待したい。


2017/09/04