JESAコラム 第9回
みなさん、こんにちは。
今回は、危険物を扱う建築物の規制についてご紹介します。
危険物を貯蔵したり、処理を行ったりする建築物について、建築基準法令では、 防火上の安全を確保する建築物自体の「単体規制」と、立地条件という観点から定められた「用途規制」があります。
まず、この「単体規制」とは、一定数量以上の危険物を貯蔵したり、処理したりする建築物は、
耐火又は準耐火構造にしなければならないとする建築物自体に対する規制です。
この一定数量として消防法令に規定する危険物については、「危険物の指定数量の10倍」とされています。
したがって、自家発電設備が設置される建築物については、主燃料タンクに指定数量の10倍以上の燃料が貯蔵される場合、
この規定が適用され、耐火又は準耐火構造にしなければなりません。
(建築基準法第27条、建築基準法施行令第116条)
次に、危険物の貯蔵等を行う建築物の「用途規制」についてです。
1.用途規制の対象となる地域
都市では様々な用途の建築物が建てられていますが、もしそれらの建築物が無秩序に建てられると、
都市機能に混乱を招き、道路、公園、下水道等の整備に支障をきたすことにもなります。
そこで都市計画法及び建築基準法では、良好な市街地環境の形成や、都市における
住居、商業、工業等の適正な配置による機能的な都市活動の確保を目的とする用途地域指定制度が設けられています。
この制度は住居、商業、工業等の市街地の大枠としての土地利用を定めたもので、用途地域を12種類に分類し、
それぞれの用途地域ごとに建てられる建築物の種類(用途)、容積率、建蔽率、高さ等について規制を課しています。
(都市計画法第8条~第10条、第11条、第13条、第15条~第18条)
(建築基準法第48条、同別表第2)
表1 用途地域(12種類) | |
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用途地域 | 建築物の制限 |
第一種低層住居専用地域 | 低層住居の要項な環境を守る為の地域。小規模な店舗、事務所を兼ねた住宅、小中学校などは建てることができる。 |
第二種低層住居専用地域 | 主に低層住居の良好な環境を守るための地域。小中学校のほか、150㎡までの一定の店舗などは建てることができる。 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住居の良好な環境を守るための地域。病院、大学、500㎡までの一定の店舗などは建てることができる。 |
第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住居の涼子な環境を守るための地域。病院、大学などの他1,500㎡までの一定の店舗、事務所などは建てることができる。 |
第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てることができる。 |
第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、パチンコ屋、カラオケボックスなどは建てることができる。 |
準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域。 |
近隣商業地域 | 近隣の住民が日用品の買い物などをする店舗等の業務の利便の増進を図る地域。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てることができる。 |
商業地域 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店、事務所などの商業等の業務の利便の増進を図る地域。住宅や小規模の工場も建てることができる。 |
準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設の業務の利便を図る地域。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てることができる。 |
工業地域 | 主に工業の業務の利便の増進を図る地域で、どんな工場でも建てることができる。十t句や店舗も建てることができるが、学校、病院、ホテルなどは建てることができない。 |
工業専用地域 | もっぱら工業の業務の利便の増進を図る地域。どんな工場でも建てることができるが、住宅、店舗、学校、病院、ホテルなどは建てることができない。 |
2.用途規制の対象となる危険物
用途規制の対象となる危険物は、上記単体規制の場合と同じで、火薬類や圧縮ガス、消防法令で定める危険物とされています。なお、次に示す危険物には適用されません。
(用途規制が適用されない危険物)
- 地下の貯蔵槽(地下タンク)に貯蔵される次のもの。
- 第一石油類(ガソリン等)
- アルコール油
- 第二石油類(灯油、軽油等)
- 第三石油類(重油等)
- 第四石油類(ギヤー油、シリンダ油等)
- 国土交通大臣が安全上及び防火上支障がない構造と認めて指定する蓄電池により貯蔵される硫黄及びナトリウム
- 土木工事などの事業で一時的に使用するために、その事業の期間中臨時に貯蔵するもの。
- 支燃性又は難燃性の圧縮ガス、液化ガス
(建築基準法施行令第116条、同施行令第条130の9)
3.用途地域に応じた危険物の貯蔵の規制
用途地域における危険物規制として、各用途地域に応じ、危険物を貯蔵する場合に制限が課せられます。 発電設備の燃料として使用される石油類の貯蔵では、地下タンクの場合を除き、次の制限量が設けられています。
表2 石油類の貯蔵の制限量 | |||
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危険物 | 第二石油類 | 第三石油類 | 備考 |
用途地域 | (灯油・軽油) | (重油) | |
第一種低層住居専用地域 第二種低層専用地域 第一種中高層住居専用地域 |
貯蔵できない | ―――――― | |
第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 |
5,000ℓ | 10,000ℓ | 指定数量の5倍 |
近隣商業地域 商業地域 |
10,000ℓ | 20,000ℓ | 指定数量の10倍 |
準工業地域 | 50,000ℓ | 100,000ℓ | 指定数量の50倍 |
工業地域 工業専用地域 指定なし |
貯蔵制限なし | ―――――― |
- 注1:第二石油類と第三石油類を同一敷地内で貯蔵する場合は、それぞれの貯蔵量を上表に示すそれぞれの制限量で除し、 その商の和を1以下にしなければならない。
- 注2:指定数量とは消防で定める危険物の指定数量をいい、第二石油類(灯油・軽油)は1,000ℓ、第三石油類(重油)は2,000ℓである。
- (建築基準法別表第2、建築基準法施行令第116条及び第130条の9、危険物の規制に関する政令)
法令による用途地域の区分けは画一的なもので、地域の状況や建築物の内容によっては、 周辺の環境を害するおそれがないと認められる場合や公益上やむを得ないと認められる場合等に限り、 「特定行政庁」(注)により用途変更等が認められているので、変更等について特定行政庁への確認が必要です。