JESAコラム 第33回
風力+太陽光が2040年に石炭火力を超える、世界の電力市場の将来予測
エネルギー分野の有力な調査機関であるBloomberg New Energy Financeが2040年の市場予測をまとめました。 石炭と天然ガスの価格が長期的に30%以上も下落します。一方、風力と太陽光の発電コストは41~60%低下する見通しです。 全世界の風力と太陽光による発電量が石炭火力を抜いて最大になります。
Bloomberg New Energy Financeが6月12日に発表したエネルギー市場の将来予測「New Energy
Outlook(NEO)2016」によると、
全世界で風力発電と太陽光発電の拡大が今後も続き、2040年には石炭火力を抜いて最大の電力源になります。
2016年と比べて年間の発電量が約7倍に増えて10兆kWh(キロワット時)を超える見通しです。
天然ガス火力の約2倍、原子力の約3倍の電力を供給します。
NEO2016では電力・エネルギー市場の注目すべき変化をさまざまな観点から予測しています。
第1に石炭と天然ガスの長期的な価格下落です。それぞれ2016年にはピーク時と比べて2分の1以下の価格に下がっていますが、
さらに今後も石炭が33%、天然ガスが30%下落します。これに伴って火力発電のコストも低下していきます。
第2の予測は風力と太陽光の発電コストが大幅に低下することです。陸上風力の発電コストは2040年までに41%、太陽光は60%も下がる見込みです。
欧米では風力が40米ドル/1000kWh、太陽光が50米ドル/1000kWh前後になります。
現在の為替レート(1米ドル=105円)で計算すると、1kWhあたり風力は4円程度、太陽光は5円程度で発電できます。
2030年代には世界の大半の国で最も安い電力源になりますと予測しています。
再エネの投資額は火力+原子力の2倍以上
新たな電力源に対します。投資の動向を見ても、風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーが全体の7割を占めます。
2016~2040年の累計で再生可能エネルギーの投資額は7.8兆米ドル(約820兆円)にのぼり、火力と原子力を合わせた投資額の2倍以上になります。
これが第3の予測です。
再生可能エネルギーの投資額のうち、風力は陸上と洋上を合わせて3.1兆米ドル、太陽光は3.4兆米ドル、水力は0.9兆米ドルを見込めます。 これに対して石炭火力は1.2兆米ドル、天然ガス火力は0.9兆米ドルで、原子力も1.1兆米ドルにとどまります。
ただし再生可能エネルギーによる電力が大幅に増えるものの、全世界の地球温暖化対策で目指す「気温上昇2℃以下」の達成はむずかしい状況です。
第4の予測では、発電に伴って排出します。CO2(二酸化炭素)が2040年には現在よりも5%増えてしまします。
欧米や中国を中心にCO2排出量の削減が進む一方、インドと東南アジアで排出量が大幅に増加するためです。 2040年に2℃以下の目標を達成するためには、CO2を排出しない電力源の開発に全世界で5.3兆米ドルの追加投資が必要になると予測しています。
このほかに第5の予測として電気自動車が急速に普及していきます。
2040年に全世界で販売する乗用車の35%が電気自動車になり、消費する電力量は年間に2.7兆kWhに達する見通しです。
加えて電気自動車の普及によって蓄電池のコストが76%低下する効果も期待できます。
再生可能エネルギーの導入量を拡大するうえで蓄電池の役割は大きく、コストの低下で蓄電容量の拡大に弾みがつきます。
引用:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1606/17/news031.html