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JESAコラム 第77回


風力発電分野でも中国が抜きんでている

元 東京電機大学 西川尚男

世界の2013年度における再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオ、地熱、潮流発電)による発電量は、 図1に示すように第1位が風力発電で発電電力量は63万GWh(6300億kWh)、 その比率が48.4%と再生可能エネルギー電源による発電量(1兆3016.5億kWh)の約半分を占め、 次いでバイオマスが28.0%、太陽光が10.6%を占めている。地球の温暖化抑制に向けて風力発電が如何に貢献しているかが分かる。 世界の累積風力発電設備容量の推移を図2に示す。2001年から平均20%以上の年間成長率で増加し、 近年では約13%で推移し、2016年度の累積設備容量は4億8675万kWであった。国別の累積設備容量の推移を図3に示す。 2000年前後からアメリカ、ドイツ、スペイン、デンマーク、オランダの5カ国が世界をリードしていたが、 2005年頃からイギリス、イタリア、フランス、ポルトガル、スウェーデンといったEU諸国が加わり、 その後経済発展に伴い電力需要が増加していった中国が、全電力量の80%を石炭火力に依存していた状態を改善するため、 風力発電設備の積極的な導入により、2010年以降世界1位を占めるに至った。各国の2016年末累積導入量を図4に示す。 同じ悩みを持っているインドでも石炭火力の依存度70%を抑制するため、風力発電の積極的な導入により、 結果として現時点で世界4位のレベルまで増加している。

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図1 世界の再生可能エネルギーの発電量内訳
再生可能エネルギーの発電容量の合計(1兆3016.5億kWh)

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図2 世界の風力発電導入量の推移(累積値)

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図3 国別の累積設備容量の推移

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図4 国別風力発電導入割合

以上は風力発電の導入状況であるが、それを支える製造メーカーについて述べる。 風力発電の導入の初期にはデンマークのVestas、アメリカのGE,スペインのGamesa(ガメサ) Eolica 、ドイツのEnercon(エネルコン)が世界をリードしていたが、 海外から技術供与を受けていた中国メーカーが徐々に力をつけ、製造のシエアを伸ばし始め、 2010年には製造容量世界順位トップ10に4社が入るレベルに至っている。2015年度製造メーカーによる新規導入量の製造世界順位トップ10を表1に示す。 世界1位は中国のGold Windで、伝統があるデンマークのVestasを抜いている。 このように中国は風力発電設置の需要とそれを支える製造メーカーが一体となって風力発電部門で著しい急成長を遂げている。

表1 世界の風力発電メーカーと1年間に建設された新規導入量(2015単年度)
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次に洋上風力発電について紹介する。洋上をオフショアともいい、海上の沿岸部あるいは沖合部での風力発電をいう。 風況に恵まれた広大な海域を有する欧州の北海、バルト海で主に行われており、イギリス、ドイツ、デンマークの3カ国で世界シェアの80%を占めている。 特にイギリスでは、政府が2020年までに32GW(3200万kW)、7000基以上の風力発電装置の設置を計画しており、これはイギリスの全消費電力の1/3に相当する。

最後に日本の状況を紹介する。日本は2004年ころまではイギリスに次いで世界シエア第8位であったのが、 2016年度では累積導入量が323.4万kWと世界の19位で、世界の累積導入量の0.7%と極めて少ない状況にある。 日本の風力発電設備累積導入量の推移を図5に示す。国産機より、輸入機の導入量が多く、また諸外国と比べ導入量が極めて少ない。 これは「日本の風力発電に対する送電網の整備が不十分である」、「台風に耐える風車を設置すると欧米よりコストアップになる」、 「大量の風力発電設備が設置できる平地の確保が困難である」、「日本ではクリーンエネルギーとして風力より太陽光を重視する傾向にある」等による。 世界の動向から見て日本は地球温暖化の抑制に対し、風力発電の導入意欲が低く感じられる。 国を挙げて風力発電事業の飛躍に力を注いでもらいたいと願っている。

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図5 海外機と国産機の導入量の推移(累積値)


2018/5/14