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JESAコラム 第72回


API経済圏その4

元東海大学 片岡信弘

(1)APIビジネス動向

API経済圏その1では、企業等が提供するデータを利用して、斬新な機能を持ったサービス(アプリ)を提供するものがAPIであり、API経済圏その2では、銀行やカード会社が提供するデータを利用するサービスの事例を紹介しました。またAPI経済圏その3では、APIを利用して他のサービスと連携し新たなサービスを迅速に作り出す例を紹介しました。

APIはソフトの世界で長年の夢であった、ソフト部品やサービスを組み合わせて新たなサービスを作る方式を実現したことになります。

今回は、このようなAPIの利用状況について紹介します。米国では、参考文献[1]のサイトでほんどのAPIが掲載されていますが、その数は、2018年2月時点で、19,000件以上となっています。一方、日本で公開されているAPIは、全体を網羅したものは存在しませんか、参考文献[2]のサイトでかなりのものか網羅されています。

APIは、企業や公共団体が、データを公開するものと、サービスを公開するものがあります。これらを概観してみると表1に示したようになります。多種多様のデータが公開されています。一方、サービスの公開としては、人工知能、解析、認証などがあります。これらのものを利用すると高度なアプリが簡単に作成可能となります。

表1 APIで公開されているデータやサービス
大分類 APIの種別
画像 動画、写真、アルバム
ソーシャル SNS、ブログ、ソーシャルブックマーク
公共 行政・自治体・公共サービス、交通、気象、災害
社会 地図情報、位置情報、天気情報
メディア テレビ番組、音楽、書籍
取引 預金、Eコマース、決済代行
ネットサービス ニュース、ゲーム、メール、ショッピング
生活 旅行、料理、レストラン、不動産、バラエティ、チケット
人工知能 デーブラーニング、自動会話
解析 テキスト解析、日本語形態素解析、校正支援
認識 音声認識、顔認識、画像、動画、翻訳

APIは必ずしも一般公開されている分けではありません。企業内で、データを公開して他の部門に利用させるとか、企業内のサービスをAPIとして部品的に他のサービスで使いやすくするなどの方式も多数存在します。

(2)APIの収益モデル

APIの収益モデルを図1に示します。ここでの収益モデルとは、APIの公開元がサービ スの開発者に対して、どのような課金を行うかのモデルです。

これには、表2で示すように4種類のモデルが考えられます。現在は、1の無償提供モデルや2のAPI課金モデルが多数を占めていますが、近い将来には、3のコミッションベースモデルや、4の売り上げ課金モデルも増加してくると考えられます。

また、これは、APIの利用に対してAPIの公開元がどのような課金を行うかを示したもので、 利用者がアプリを利用した時にどのような課金が行われるかは別です。 利用者の課金は、アプリの種類により異なってきます。例えば、マネーフォワードは無料ですが、 プレミアム会員では有料となっています。
image1

表2 API課金モデル
課金モデル APIに対する課金方式 目的 事例他
1
無償提供モデル(フリミアム)
アプリ開発者に対してAPIを無償提供し、高品質なアプリを作ってもらう ブランド力の強化や顧客ロイヤリティの向上などを狙う マネーフォワード等
アプリの利用を有料にするかは様々。マネーフォワードはプレミアム会員では有料
2
API課金モデル
API利用時に料金を徴収 APIで提供される機能は、有用であるが、提供元には、公開のメリットがそれほどない場合 GoogleMaps API等
GoogleMapsは、1日のアクセス件数が、2500件を超えると有料となる。アプリの利用を有料にするかは様々。
3
コミッションベースモデル
APIを利用するアプリに課金する方式。ユーザのトランザクションが発生するごとに課金する アプリに対する課金は、アプリが有効な成果を出した件数に対応。成功報酬的な意味合いとなり合理的 オンラインリテール等
株取引のアプリだとすると取引回数に応じてアプリに課金。アプリ利用者にどのような課金をするかは様々
4
売り上げ課金モデル
アプリを通じて得た売り上げの数%を徴収 API提供者は間接的に利益を得る アプリにより売り上げを行うわけで、アプリ利用は無料が多い

参考文献

  1. programmablewebのWebサイト
    https://www.programmableweb.com/
  2. 日本の全エンジニアに捧ぐ!現在公開されているAPI一覧
    https://www.find-job.net/startup/api-2013
  3. ビジネス変革の主役「API」を生かす4つの収益モデル
    https://japan.zdnet.com/article/35061159/
  4. 認識系API活用入門
    http://www.atmarkit.co.jp/ait/series/5164/

2018/2/19