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JESAコラム 第63回


API経済圏その1

元東海大学 片岡信弘

最近は、他の企業のデータをインターネット経由で利用しその企業が提供していない木目細かいサービスを提供するスマホアブリが増加しています。 場合によっては、複数の企業のデータを利用する場合もあります。 つまり、人の力を利用して新しいサービスを展開するわけです。 このような他社のデータをインターネット経由でアクセスするインタフェースをAPIと呼びます。 このAPIにより新しく創生されるビジネスをAPI経済圏と呼びます。

API(Application Programming Interface)とは何かサービスを利用する指示を出す手続きのことを意味します。

これは、従来からも1つのシステムの中で、あるアプリケーションが、他のアプリケーションを呼び出して利用することが行われてきました(Java APIなど)。

これに対して、最近の利用方法は、インターネットを経由で、他社が提供するサービスを利用する方式に広がっています。したがってこれはWeb APIとも呼ばれます。

最もポピュラーに事例では、自社のホームページにGoogle Mapを組み込み自社の所在地を示すことです。 このようなWebサイト同士を繋ぎ合わせるAPIの使い方は、Mashup と呼ばれ10年以上前から盛んに行われてきました。 これにより複雑な機能を持つWebサイトを少ない工数で作成することが可能になります。

1つの事例では、Google Mapsと中古車販売のカーセンサnetをMashupすることにより図1に示すようなCAR MAPのアプリが簡単に作れます。ここでは、検索オプションとして、地域、価格帯、自動車の種類などを入力すると、対応した自動車を販売しているカーセンサnetの店舗が表示され、その店舗をクリックすると詳細情報が表示されます。

図1 Google MapsとカーセンサnetのMashup事例

Mashup Awardsというコンテストが2006年から行われています。これは、ソフトバンク、IBM、LINE、docomo、 リクルートなど多数の企業がスポンサーしてAPIを提供し、 これを利用して作成されたMashupのなかから優秀秀なものを選出するコンテストです。

このような、Mashupに対してここ数年は、企業が提供するデータを利用して、新しいアプリをパソコンやスマートフォーンで提供する方式が増加してきています。 例えば、銀行やカード会社のデータの参照や更新のためのAPIを利用し、従来ではできなった様々なきめ細かいサービスが提供されるようになっています。

マネーフォワードのスマホアプリは、銀行、カード会社、電子マネー会社、ネット通販会社などとAPIで連携し家計簿を作成してくれます。

このように、APIを利用することにより従来存在しなかった新しいサービスを世の中に生み出すことにより新しい経済圏(ビジネス群)が発生することと なります。これが、API経済圏と呼ばれる理由です。

ではなぜこのようなAPIの利用が盛になってきたのでしょうか。デジタルITの世界が進み、色々なことが実現可能となりました。 また、ユーザの要求レベルも高くなり、それに応えるスマホアプリがどんどん開発されています。 一方、企業の基幹システムは、安定稼動が要求されるためその変化は極めてゆっくりです。 この2つのスピードの違いを吸収するものが、APIであると言えます。

企業の基幹システムは、多様な要求に応える代わりにデータアクセスサービスのためのAPIを提供します。 これを利用して多様な要求に素早く対応するアプリを他社が作成し提供することとなります。これを図2に示します。

次回では、APIの利用の事例を詳しく説明する予定です。


図2 API利用の構造


2017/09/19